特集インタビュー エデンプロジェクト


「私たちは貧しいけれど川向こうの金持ちの人たちの様にゴミを川に投げ捨てないし、汚水も直接川に流さない」と誇らしげに答えたネパールの首都カトマンズのスラム街に住む男性。決して豊かな生活ではないが、彼らの周りに変化が起きている。
ネパール連邦民主共和国は、東、西、南をインドに、北方を中国チベット自治区に接する、西北から東南方向に細長い内陸国である。
世界の屋根ヒマラヤ山脈を抱いたネパールは、美しい自然や文化遺産に恵まれた国。首都カトマンズは「天空の都」とも呼ばれ、世界遺産に登録された文化遺産は7ヵ所に上る。しかし、このカトマンズが環境破壊の危機に直面しているというのだ。地形的な問題や、人口増加にともない、大気汚染、水質汚濁、街に散乱するゴミの問題などを抱え、貧困のゆえにさらに住環境が悪化している。
そのネパールの首都カトマンズで、東風平巌師一家は環境問題に取り組んでいる。2003年、沖縄バプテスト連盟(OBC)から宣教師として家族で派遣された。
ネパールの首都カトマンズに到着し、始めに驚いたのはゴミが道端や広場に捨てられたままになっていた事。家族でお弁当を食べようと広場に行ったが、そこは辺り一面ゴミだらけ。
妻の道子さんがその様子を見兼ね て、ゴミを拾っていった。すると、始めは何をしているのかと興味本位で見ていた周りの人々も一緒にゴミを拾い出した。気がつけばそれは50人程の一団になっていた。ネパールではゴミはけがれた物で、ごみ処理は伝統的に低カースト(身分)とされる清掃人によって行われてきた。しかし人口増加により、その仕組みも機能しなくなり、都市部では土に還らないゴミなどが放置された状態だ。当時、東風平師は長期ビザを取るために学校の教師をしようかと考えていたが、この出来事がきっかけとなり、ネパールのゴミ問題について何か出来ることはないかと模索する様になった。
しかし、外国で環境問題に関する組織を立て上げ活動を始めるのはそう簡単ではない。考え抜いた末に東風平師は、当地で1994年以来活動をしているネパールバプテスト教会協議会傘下のNGO
「多目的地域開発事業」(MCDS)の協力を取り付け、その一部門としての活動が可能となった。そして、沖縄の諸教会からの支援金を受け、ネパールの環境問題に取り組む「エデンプロジェクト」構想に着手した。

モデル地区にはブッダジョティと呼ばれる75世帯の低所得者が暮らすスラム(無許可居住区)を選んだ。現地の人々とコミュニケーションを図り、様々なゴミリサイクル活動に参加してもらうことで
人々のゴミ問題に対する意識の変化を促し、自主的に環境に優しい生活を送れるように導くのが狙いだ。まずは、意識を変革するための啓発プログラムを実施。
「ポイ捨ての習慣を止める。環境問題はみんなの責任。ゴミを分別して出す、集めたゴミは資源として有効利用する」などを知ってもらうために、様々なイベントを企画。東風平師は現地で覚えたネパール語で一生懸命伝えた。


そして具体的には、ブッダジョティの全世帯に分別用の容器を配り、上手く分別できたかを毎回チェックして各家庭に知らせている。その成果もあり、分別をすることが習慣化してきている。また、回収した紙類から再生紙を作り、それを利用してファイルや小物を製作し販売している。収益は地域生活向上に役立てられている。
また、農業従事者の多いネパールでは、有機肥料は価値が高い。集めた生ゴミは、微生物資材等を混ぜて発酵させ、質の高い有機生ゴミ堆肥を生産している。それらの堆肥を使用した野菜や花の栽培を通してその有効性を実体験してもらう。生産した花や野菜はガーデン作りに用いられているほか、市場でも販売。花を飾る習慣が低所得層にも広まればもう少し売上を伸ばすことができると期待されている。
地域住民を巻き込んで年に2〜3回、地域や河川の一斉清掃キャンペーンも行っている。4月のアースデー(地球の日)には300人以上の人々がブッダジョティの脇を流れる小さなビシュマティ川のゴミ拾いをした。この川は生活排水や汚水により極端に汚染されている。ところが、瞬く間にゴミが取り除かれ、回収した袋は山積みになった。東風平師は「身の回りの環境は自身が責任を持って奇麗にするということが大分浸透してきた」と、その変化を見届けている。
「エデンプロジェクト」の活動が認められ、4月22日のアースデーには、環境問題解決に貢献している他の団体と共に地元テレビに取り上げられた。テレビ取材のカメラを向けられる住民たちは次々に「私たちは貧しいけれど川向こうの金持ちの人たちの様にゴミを川に投げ捨てないし、汚水も直接川に流さない」「ゴミの分別を面倒がらずにきちんと行なっている」と誇らしげにインタビューに答えた。その自信に満ちた笑顔から、変化したのは環境だけではなさそうだ。

東風平師に、これからのエデンプロジェクトについて尋ねると、「エデンプロジェクトのスタッフが力を付けて自分たちで運営して行くことができるようになれば、全て譲って、また新しい場所で『エデンプロジェクト』を始めることを考えていますし、その日が近いことを感じています。新しく始めるとなればまた多額の資金を必要としますが、多くの方々の祈りが、天の蔵の扉を開いてその必要を満たしてくれると信じています」と語った。
一人がゴミを拾ったことから始まった「エデンプロジェクト」。沖縄から世界へ踏み出したその一歩が、ネパールの人々に希望をもたらし、さらに広がろうとしている。
問い合わせ
沖縄バプテスト連盟内
東風平巌宣教師を支える会
〒901‐2134
沖縄県浦添市港川2-25-1
TEL098-878-7629
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