特集 「老いと介護、そして家族」


「夕暮れ時に、光がある」(ゼカリヤ書 14章7節)



 今、私たちが住んでいる日本は、猛烈なスピードで高齢化が進んでいます。欧米などの先進国の中で50年から100年かかったといわれる高齢社会(総人口の65歳が占める割合が14 %)までの道のりを日本は、わずか25年で通過してしまいました。
 このスピードは、更に加速しています。老いは、もはや自分自身と家族の問題として、その本質を見つめ対応していかなければならないほど緊急の課題なのです。一方、老年期は、私たちのライフサイクルに例えると夕暮れかもしれません。しかしながら、旧約聖書のゼカリヤ書では、夕暮れ時に光があることを教えています。
 本来、老いは人生の集大成であり、それまで培ってきた知恵と知識を子孫に与えていく時期だと言われています。まさしく光として輝く時なのです。しかし、急速な経済発展の下での生活スタイルの変化により、核家族が進行し、それまで強固であった親や地域との関係が希薄なものになっています。そのような中で親の介護問題が起きた時、残念ながら多くは、かつての様に親を世話し、関わり続けるという姿を見ることが少なくなっています。このような状況を改善するために、国は2000年4月から介護保険制度をスタートさせ介護を本人や家族の責任ではなく、社会的なものとして支える仕組みを始めたのです。
 しかし現実は、困難な問題が立ちはだかっています。例えば、独り暮らしや老人のみの世帯。認知症高齢者の予想を超えての増加。介護者の疲れ、虐待、自己負担増により、サービスが受けたくてもできないという状況もあります。それではどのようにすれば、本来「光」である老年期が輝くのでしょうか。そのキーワードは「つながりの回復」です。


家族とのつながり
 最初の「つながりの回復」は、家族です。先ほど、お話したように核家族の進行によって薄くなっている「家族のつながり」の回復です。そのためには、介護がたくさんの思いやりと時間、労力を要するという現実を家族で共有していかなければなりません。人生の終末期を迎えた親に、子どもまたは家族として、どう向き合っていくのかということです。家族同士で何度も話し合いを重ね、家族としての絆と誇りを回復した事例をいくつも見てきました。具体的に介護を行うことで親と自分の人生が重なり、他者と自分への「愛おしさ」が芽生えてくるのです。そういう面で介護は、家族崩壊というピンチが逆に絆の復活というチャンスに変わることにもなりうるのです。それは家族の人生の質を高めることにもなります。


地域とのつながり
 次の「つながりの回復」は、地域社会の回復です。現在子どもから高齢者までの課題として上げられる問題は「ひきこもり」です。個人を含め、地域はその閉鎖性を強めています。人は、社会との接点があって初めて、生き生きと張りのある人生を送れるものです。そのためには、住み慣れた地域で世代を超えて集まり交流するための日常的な場所とそれを支える人が必要なのです。教会も、その一翼を担っていると思います。
 では、家族がいない高齢者は、どうすればいいのでしょうか。私は、そこに教会における共同体が果たす「神の家族」という働きの可能性をみることができると思います。そして、この重要性は、今後ますます増してくるでしょう。教会が御言葉を述べ伝えることと、高齢者の生活を支援することは、老年期に光を与える大切な働きとなります。私ども「きらめき」は、現代社会が直面する老いと介護、そして家族の問題に神様の助けをいただきつつ、少しでもお役に立てればと嘉手納バプテスト教会のクリスチャン有志が四年前に事業を開始いたしました。現在、その働きはケアセンター「きらめき」で「一つ屋根のきらめき家族」をモットーに、児童デイサービスと高齢者通所介護施設の働きを通して、子どもから高齢者までの交流を大切にしています。また、その交流は教会や地域の方々の協力を得て着実な広がりを見せています。高齢者との交流を通して不登校の中学生や課題を抱えた大学生が学校に戻ったり、ハンディーを持った子どもが、一般の保育園に通うようになっています。それらは、高齢者が持つ夕暮れ時の「光」に接し、大きな力と慰めをいただいたからです。
神とのつながり 
 さて、最後の「つながりの回復」は、神との回復です。沖縄は言うまでもなく祖先崇拝の意識が強い社会です。人生の終末期において、本当の神、そして人を愛するキリストに出会うことで神とのつながりを回復することが必要になっています。きらめきでは、週に一度、聖書のお話を聞き、神の愛と家族の大切さを知る時間を設けています。
 神様が、老いを迎える一人一人と支える人々に、お互いの祈りと知恵を生かしあうことで、老年期が光として輝くよう望んでいることを強く感じる昨今です。

「あなたが年をとっても、わたしは同じようにする。あなたがしらがになっても、わたしは背負う。わたしはそうしてきたのだ。なお、わたしは運ぼう。わたしは背負って、救い出そう。」
(イザヤ46章4節)




プロフィール
ケアセンターきらめき共同代表 渡慶次憲
1981年日本福祉大学卒業。その後、嘉手納町社会福祉協議会事務局長、特定医療法人葦の会地域支援局長を経て、現職。志を共にする仲間と介護と福音の連携により、子どもから高齢者までが世代を超えて交流し、住み慣れた地域で豊かに暮らす共生社会の広がりを目指している。







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