Salt&Light#17
伊江 留津美さん
MOJ ピアノ教室・読谷グランディールピアノ教室代表 MOJ ファミリーチャーチ牧師
クラシックピアノ嫌いの少女時代
神さまとピアノに愛された人。留津美さんとお話ししているとそんな印象が心に焼きついて離れません。
父はオペラ歌手、母はピアノ 師という音楽一家に生を受け、4歳から母の手ほどきでピアノを習い始めます。しかし、クラシックピアノは大嫌いで練習を怠けることも。それでもいくつかのコンクールで入賞することはできましたが、競技としてのピアノを好きになることはできませんでした。
「楽しいはずの音楽で競い合うことが好きになれませんでした」
また、牧師でもある両親同様に、彼女自身も小・中学校時代は学校で伝道の日々。夢は牧師というほど信仰熱心な少女でした。15歳でバンド活動に楽しみを見いだし、教会の賛美チームでキーボードを担当。みんなで楽器を演奏する賛美は、好きな楽にのめり込む場となり、クラシックから心は完全に離れていきました。
クラシックに救われる
多感な10代後半。さまざまな理由から落ち込んでしまい、自分の殻に閉じこもる時期がありました。そんな時、母の勧めで名古屋のピアノ講師の元に向かいます。そこで出会ったクラシックの名曲、ブラームスの「ラプソディ 第1番ロ短 」が彼女を救います。
この曲には、ブラームスが葛藤と苦しみの中で神への希望を見いだしていく背景があります。曲を深く学び演奏していくうち、自分の現状と重なり、涙が止まらなくなったそうです。
「クラシックを深く学んだことで、クラシックは時代を超えた賛美なんだと、初めてその素晴らしさを体験した瞬間でした」
沈んだ心を救われ、夢だった牧師になるため19歳で北海道にある神学校へ進学。その頃もまだ、クラシックには多少の抵抗が残っていました。しかし、ひょんなことから神学校に訪れたバイオリニストのコンサートに出演することに。
「正直あまり乗り気ではありませんでした。けど、ここまでクラシックと関係が切れないのは、クラシックに呼ばれているような気がしてなりませんでした」
母のピアノ教室を手伝うために23歳で沖縄へ。しかし、クラシックへの思いは相変わらずの彼女に2度目の転機が訪れます。自身の勉強のために行ったピアノコンサートで、リストの「ピアノソナタ ロ短 」を耳にした瞬間、訳も分からず号泣。リストもまた熱心なクリスチャンで、その曲も信仰的な曲だったのです。
「あれは本当に神さまが私の心に触れたとしか言いようがありませんでした」
それまで抱いていたクラシックへの抵抗感は払拭され、もっとクラシックを学びたいと思うようになったそうです。それからは、音楽に携わるの友人たちと本土のカフェでコンサートを企画したり、県内ではチャリティコンサートチーム「アルモニア」に所属するなど演奏活動にも力を入れています。
音楽を一生の友に
「音楽を一生の友に」この言葉は、留津美さんが一番大切にしている指導のコンセプトです。 音楽は辛い時に慰めを与え、人の輪を広げる。そんな喜びを知った自身の経験から、音楽を心から楽しんでほしい。そんな思いがめられています。
そのため、小さな子どもたちにはまずピアノに心が向くように、楽しみながら教えることを心がけています。中高生や大人の方には、ただ技術を教えるのではなく、曲の成り立ちや作曲者の人物象など、 自分の感動も交えながら教えていくのだとか。時にヒートアップしすぎて練習時間がなくなってしまったこともあったそうで、生徒や他の講師からは「留津美先生はいつも楽しそうだね」と言われるほどです。
彼女のクラスは次第に人気を博し、週に80人の生徒を抱えるほど大きくなっていきました。「楽譜は作曲者の思いが詰まったお手紙。その手紙を受け取って心を込めて演奏してほしい」
楽しそうな話ぶりに、人気が出るのもうなずけました。
父と母の思いを受け継いで
32歳で母からいくつかのピアノ教室を任され、経営者としての歩みは2年。今年から父の教会も引き継ぎ、牧師としての働きもスタートしています。教会のメンバーはピアノ教室から繋がった方が多く、最近では、講師仲間のひとりが救われ、毎週教会に通うようになったそうです。ピアノ教室が伝道の場として用いられています。
「両親はいつも、音楽は平和のためにあると教えてくれました。だから、競い合うものとしての音楽ではなく、人々の心が平和に向くように。そして、イエスさまの愛が満ちて笑顔が溢れるピアノ教室となってほしいです」
インタビューの最後に、ピアノを弾いてくださいました。弾き始めると、その場の空気を一変するほど心のこもった演奏。キリストの香りならぬ、キ
リストの音色が、彼女を通して人に感動を与えているのだと感じました。
現在は、教会でピアノ奉仕をしたい方の受講も受け付けているとのこと。ピアノを思う存分楽しみたい方はMOJ ピアノ教室へ。