SALT And LIGHT #19

當山 礼子さん (グルクンかまぼこの照屋 店長)
グルクンかまぼこ

母の味

 昔ながらのお店が軒を連ねる大平通り商店街(那覇市)にある「グルクンかまぼこの照屋」。1988年に店長の當山礼子さんの母ミツさんによって創業しました。久米島の特産品として知られるグルクン(タカサゴ)を使ったかまぼこを販売しています。當山さんは幼い頃、3人の姉と弟と一緒に、かまぼこ作りをよく手伝っていたそうです。「当時は、大量のグルクンをすべて手作業で捌いてミンチにしていました。大変でしたが、とても楽しかったのを覚えています」


 創業時は店舗が無く、ミツさんはトレイに入れた大量のかまぼこを肩に担いで商店街を歩き売りしていました。次第にその美味しさが評判になり、現在の場所に店を構えるまでになります。家族のために働く母の背中と、かまぼこの味に憧れと親しみを覚え、當山さんはいつか自分でもかまぼこ屋をしたいと思うようになりました。


 2015年、ミツさんの体調不良により、惜しまれつつ店を休業することに。その後、姉が店を切り盛りしたり、親戚がその場所を使って他のお店を開くなどしましたが、空き店舗の状態になってしまいます。當山さんは、別の場所で開業を目指しますが思うように進まずにいました。

 2020年、精神的にも落ち込んでいた母を元気にしたいと「またかまぼこ屋さんをやろう」と話しました。そして、母の「私もまた、かまぼこが食べたい」との言葉に背中を押され、お店を再開します。

試行錯誤と祈りの日々

 新たに営業を始めると、昔の味を求めて当時のお客さまがたくさん訪れました。しかし、当初は「あの頃の味と違う」と厳しいお言葉を頂いたのだそう。母の味を再現するため、ミツさんに一からかまぼこ作りの指南を受けます。しかし、目分量の作り方にとても戸惑ったと言います。「言われた通りにやっても昔の味にならず、とても悔しかった」と當山さん。

 それでも、母の味を知る自分の舌を頼りに、試行錯誤を繰り返します。努力の末次第に認められ、馴染みの方から口コミで来られる新規の方、観光客も
買い求めに来るようになっていきました。たくさんのお客さまとの出会いは嬉しい反面、「今日も無事に売れるだろうか」とプレッシャーに感じてしまうこともあったそうです。そんな思いの中でも、聖書のみことばが彼女の励ましになったと言います。


というのは、神がわたしたちに下さったのは、臆する霊ではなく、力と愛と慎みとの霊なのである。テモテへの第二の手紙1章7節

「自分の力ではなく神さまの力でできるんだと、いつもこのみことばに励まされています」開店前は感謝の祈りからスタート。来店される方は神さまが連れてきて下さったと、愛を持って接することを心掛けています。取材中に来店されたお客さまが笑顔で買って行かれるのを見て、當山さんの思いが伝わっていると感じました。
 

 また、2児の母でもある當山さんは、大切な物を一番にしたいとの気持ちから、家族を優先にした経営をしています。子どもたちの学校行事や病気の時は、お店を閉める事もあるとのこと。それでも理解してくださるお客さまに支えられ、お店を続けられる事にお客さまの愛を感じるそうです。

地元の人に親しまれ愛される味へ

 當山さんの作るかまぼこは、一般的なかまぼこに多く使われるつなぎ(でんぷん・タピオカ粉)の割合が少なく、グルクンをたっぷり含むため、その味は濃厚。もちもちのかまぼこは、噛み締めるほどグルクンの旨みが口いっぱいに広がり、普通のかまぼこの味とは一線を画します。また、保存料や着色料を使用していません。


 スライスしたかまぼこを両面に軽く焦げ目が付くまでフライパンで焼き、わさび醤油でいただくと絶品だそう。数量限定のため、早い時は開店1〜2時間で売り切れてしまう事もあるので、お求めの際は電話注文がオススメ。かまぼこの他にも、自家製の玄米ドリンクやお惣菜。金武町で田芋農家を営むご主人の畑から、目利きして選んだ田芋で作った唐揚げやリンガクも人気です。

「これからもたくさんの人にグルクンかまぼこを食べてほしいです。だからなるべく長くお店を続けていきたいなと思っています。でも、このお店の主ぬしはイエスさまなので、彼に従って行きたいです」
 

 母の代から地元の方に親しまれてきたグルクンかまぼこは、娘の代でもたくさんの人に愛されています。母から受け継いだ、當山さんのてぃーあんだー(愛情)たっぷりの絶品グルクンかまぼこ、ぜひご賞味あれ。

お惣菜、田芋唐揚げにリンガク、自家製玄米ドリンクも人気
グルクンかまぼこの照屋
〒902-0065
那覇市壺屋1丁目1−1太平通り商店街
TEL 080-6494-9240